紫アスパラの生食サラダ。生カシューナッツとココナッツオイルのディップで。。
紫アスパラガスは、グリーンアスパラガスやホワイトアスパラガスに比べて、食感が柔らかく、甘味が強いので生食に向くアスパラガスです。茹でると紫色素は溶け出してしまって、グリーンアスパラガスと変わらなくなってしまうので、食卓の彩りを賑やかにするのにも、生食が適しているでしょう。アスパラガスは収穫後どんどん甘味が消えてしまうので、なるべく早く食べたほうが、味の深みを楽しめます。以前、イタリア料理店でイタリアから輸入された高級なDOPホワイトアスパラガスをいただきました。DOPと聞いて、胸躍らせていただきましたが、ただただ苦味が強くて、味の多様性が失われていて愕然としました。おそらく収穫後何日もひょっとしたら何週間か過ぎたものだったのでしょう。もともとホワイトアスパラガスは他のアスパラガスに比べて苦味が強いのが特徴。それを春の山菜の苦味のように楽しむことが季節の風物詩なのですが、度を越せばただの苦行です。アスパラガスは鮮度が命、DOPでもIGPでも鮮度の悪いものはそれなりの調理法が必要であることを思い知らされました。
ウチでは畑仕事の終わりに紫アスパラガスをポキっと収穫して、帰宅してすぐに晩飯にいただく。最高の鮮度で、味も香りも食感も多様性に富んだ状態です。菜園家ならではの究極のひと皿ですね。
紫アスパラガス
アスパラガスは、地中海沿岸が原産地だそうで、ユリ科の多年生草本植物です。近年の新しい植物の分類法APG体系ではキジカクシ科とされています。和名はオランダキジカクシ。成長するとその草姿がキジを隠すほどになる事とオランダから持ち込まれた事から名付けられたそうです。ん〜?もう少し責任感のあるネーミングを期待してしまうのは私だけでしょうか?キジが隠れる植物はいくらでもあると思いますよ。オランダから来たやつも。。。
他にも、マツバウドや野天文(のてんもん)などの和名がありますが、北海道ではホタルグサと呼ばれていたところもあるそうです。
新芽の茎が20〜30cmくらいに成長したものを食用とします。最近では50cmもある香川県が開発したロングアスパラガスなんてものもあります。通常、一般に流通しているものは、グリーンアスパラガスですが、ホワイトアスパラガスや紫アスパラガスがあり、ごく少数ですがピンクアスパラガスもあります。
食用の歴史は古く、紀元前2000年頃からとされています。古代ギリシャ、古代ローマ時代には栽培されていたそうです。日本へは江戸時代、オランダから長崎に伝えられたのが最初とされています。当時は、観賞用として認識されただけで、食用とされたのは明治に入ってから。フランスとアメリカから導入し、横浜と神戸で試作栽培されたそうです。その後、大正13年には、北海道岩内町に日本アスパラガス株式会社が設立され、昭和4年には、北海道喜茂別町で本格的な缶詰加工用のホワイトアスパラガスの栽培が始まったそうです。戦後の昭和生まれの私たちには、まだ冷蔵庫の普及が少なく、また冷蔵庫が普及し始めても電力の供給が不安定だったので、この缶詰のホワイトアスパラガスはありがたい常備食でした。今でも、我が家の災害時用のバッグに入っています。おそらく、長期に渡って成功を収めた6次産業の一つと言えるでしょう。
さて、紫アスパラガスですが、大元はイタリア北部で生まれたVioletto di Albengaという品種だそうです。これを祖先にしていろいろな紫アスパラガスが世界で育種されて、今の紫アスパラガスが存在しているとのこと。そう言った意味では、紫アスパラガスは「イタリア野菜」と言えるかもしれません。オランダキジカクシではなく、是非イタリアキジカクシと呼びたいですね。